2025年白トリュフシーズン:レビュー

今年も残り1ヶ月となり、ようやく今年の白トリュフシーズンを振り返りたいと思います。

まず結論を言うと、今年はシーズン前の評判どおり、白トリュフにとって「当たり年」といえるシーズンでした。イタリアでは夏に十分な雨が降り、昨年よりも多く、そして大きく育った白トリュフが目立ちました(※昨年は不作の年でした)。

10月の時点では、ピエモンテ産の白トリュフは採集量が少ない状況でしたが、マルケ州では安定しており、問題なし。供給が安定する11月後半には、市場取引価格も昨年同時期の5〜6割ほどに落ち着いてきました。特に、50g以上の中粒〜大粒のトリュフが多く流通している点が今年の特徴です。

例年どおり、これからクリスマスに向けて需要が高まるにつれ価格は上昇しますが、よほどの悪天候が続くようなことがなければ、12月の市場価格も昨年より大幅に安くなると予想されます。

大きな粒の白トリュフが計りにのっている

虫食いも少なく、立派な白トリュフ。
画像をみるだけで品質の良さが分かります。

日本国内での白トリュフ流通は?

欧州の白トリュフ相場が安くなった分、日本国内でも多く流通するかと思いきや、
白トリュフの買い手がつかず大幅な値下げをしたトリュフ業者もあったと聞きます。
原因は、記録的な円安ユーロ高で、イタリアでトリュフの価格が下がっても日本ではいまだ高額であること、
今年は円安、物価高の影響でワインやチーズ、オリーブオイルなどあらゆる食材の仕入れ値があがっており、
レストランも白トリュフの仕入れ予算がなくなってきている現状があります。

円安、物価高で削られる白トリュフ予算

仕入れた白トリュフは、表面の泥や虫食い穴、ひび割れに入り込んだ細かな砂などを丁寧に取り除いたうえで、お客様に提供されます。白トリュフは通常、1日で少なくとも1g以上軽くなるため、仕入れから提供までの間にも必ず目減りが発生します。

こうした点を踏まえると、レストランが白トリュフ1gあたり1,000円を請求したとしても、決して過剰な価格設定とはいえません。白トリュフはレストランにとってリスクの大きい食材であり、単体では利益を出しにくいのです。

そのため従来、白トリュフを扱うレストランは、白トリュフに合わせたコース料理やワインで客単価を上げたり、希少な食材を提供できる店としてのステータスを打ち出すことで、全体の採算を取ってきたのだと思われます。

しかし近年は白トリュフに限らず、あらゆる物価が上昇しており、そのビジネスモデルさえ成り立ちにくくなっています。この状況下で、泣く泣く白トリュフの仕入れをあきらめるレストランも増えているのが現状です。

最低限のコストで白トリュフを提供するには

「仕入れる白トリュフの価格を抑えたい」という飲食店におすすめしているのが、20g以下の小粒または欠けている白トリュフを使用する方法です。通常これらの白トリュフのグラム単価は安く設定されています。お客様の目の前でなくキッチンで削って提供すれば、中粒のトリュフと何ら変わりはありません。大きめのトリュフは客前で削る用、欠けているトリュフは削ってから提供する料理用、など使い分けるのもいいでしょう。

小さな白トリュフを指でつまんでいる様子

小粒でも状態が良い白トリュフは
強い香りを放ちます。

クリスマスにも白トリュフを食べられるようになった?

さて、ここまで少し暗い話題が続きましたが、明るいニュースもあります。近年、気候変動の影響などにより白トリュフのシーズンが後ろにずれ込む傾向が見られます。かつては10月上旬から12月上旬が最盛期で、最も需要の高まるクリスマスには白トリュフが手に入らないこともしばしばありました。そのため、クリスマスディナーコースはウィンター黒トリュフを中心に組み立てるのが一般的だったのです。

ところが近年は、12月中旬以降でも状態の良い白トリュフが多く出回るようになってきました。もっとも、クリスマス時期はトリュフハンターが休暇を取ることも多く、さらに年末は物流や税関の影響で流通自体が減ってしまうため、供給量は大きく落ち込みます。

それでも、条件が良ければ1月中旬ごろまで白トリュフが採れることもあります。クリスマスを過ぎると需要が下がるため、価格が落ち着く点もポジティブな要素といえるでしょう。

ところで、ここで一つ注意が必要です。イタリアでは12月から2月にかけて大雪が降ることがあり、雪が積もるとトリュフ犬の嗅覚が働きにくくなるため、採集量に大きく影響します。たとえ事前に白トリュフの入荷を予定していても、このような不確実性があることは常に念頭に置いておくべきでしょう。

Yuko Uchikoshi

I love truffles!