日本で発見!ハニートリュフとは?

プレビ⁠ュ⁠ー

暑さがいよいよ本格化しようとしていた7月初旬、国内のあるアスパラガス畑に、「ハニートリュフ」と呼ばれる希少な白いトリュフが自生しているという知らせが届いた。果たして本当に日本の畑にトリュフが自生しているのか――。その姿を自分たちの目で確かめるため、私たちは現地へと向かった。

fresh honey truffles

今回確認した日本国内でみつかったハニートリュフ(学名:Mattirolomyces terfezioides、以下M. terfezioides)

ハニートリュフとは?

ハニートリュフ(学名:Mattirolomyces terfezioides)は、主にハンガリーのニセアカシア林で夏から秋に採れる非常に珍しいトリュフ。ニセアカシアはアカシア蜂蜜の蜜源としてもよく知られている。一般的なトリュフが属するセイヨウショウロ科(Tuber)とは分類学的に異なり、チャワンタケ科の仲間に分類されるが、地下に子実体を形成し食用として利用されることから、「トリュフ」として流通している。

honey truffles

アスパラガス栽培のビニールハウス内で

fresh honey truffle

アスパラガスの株元に、顔をのぞかせる白い塊

現地に到着すると、さっそくアスパラガスが栽培されているハウスへ向かった。そこでは、30グラムほどに育ったしっかりとしたハニートリュフが、いくつも地表から顔をのぞかせていた。

このハウスでハニートリュフが見つかったのは今年が初めてではない。何年も前からたびたび発見されていたものの、今回、林業センターに検体を持ち込んで調べたところ、ハニートリュフ(学名:Mattirolomyces terfezioides)と同一であることが確認されたという。

実は日本でも、2010年前後からハニートリュフの発見例が報告されているというが、国内で記録されているものはいずれもアスパラガス畑から見つかったものだという点が興味深い。

今回取材に協力してくれたハウスでは、夏だけでなく、春の5月頃にもハニートリュフが見つかったことがあるという。一方で、近隣のアスパラガス畑では確認されていない。

なぜこのハウスだけで発生するのか、その理由はまだ明らかではない。ただ、この畑では卵の殻を土に混ぜて土壌をアルカリ性に調整していること、農薬を使用していないこと、さらに屋根を大きく開放できるハウス構造であることなど、いくつかの特徴がある。こうした土壌条件や栽培環境が複合的に作用し、ハニートリュフの生育に適した環境をつくり出している可能性も考えられる。

ハニートリュフは熟れると地表から顔を出す?

ハニートリュフを探すこと自体は、それほど難しくない。成熟すると自ら地表近くまで姿を現し、人間の鼻でも感じ取れるほど強い香りを放つからだ。

ただし、地表近くに現れたものの多くはすでに虫の食害を受けており、虫食いのないきれいな個体を見つけるのは難しいという。この特徴は、ヨーロッパの黒トリュフ栽培で「チャパ」と呼ばれる、地表のごく浅い位置に形成されるトリュフとよく似ている。

チャパは一見すると見つけやすく、喜ばしい発見のように思えるが、実際には扱いの難しい存在だ。地表付近は気温など天候の影響を直接受けるうえ、昆虫による食害にもさらされやすい。虫に食われたり内部に坑道をつくられたりすることで成熟や劣化が急速に進み、強い香りを放つ頃には、すでに傷みや腐敗が始まっているものも少なくない。

honey truffles in hand

白トリュフ(T. Magnatum)のように外皮は薄く実は柔らかめ

greva of honey truffle

断面(トリュフの状態は良くない)

国産ハニートリュフの香り、味、食材としての可能性

この畑から出てきたハニートリュフを実際に手に取り、匂いを確かめてみた。成熟した個体はすでにわずかに腐敗が進み、実は柔らかく、かなり強い匂いを放っている。トリュフ特有の香りと土っぽさの中に、甘い香りが混じるのが印象的だった。

特徴的なのは香りだけではない。実際に口にすると、はっきりとした甘味が感じられる。ただし、今回採取した完熟個体の風味は、市場に流通しているハンガリー産ハニートリュフ(日本ではほとんど流通しない)と比べると劣り、食材として利用するには難しい印象を受けた。

もっとも、これはハニートリュフそのものの品質というより、熟度による影響が大きいと考えられる。実際、ハンガリー産のハニートリュフも、食材として適しているのは地表に現れるほど完熟したものではなく、完熟する前に地中から掘り出された個体だという。

honey truffle slices
honey truffles

ハニートリュフが国内に自生する意味

ハニートリュフが市場にほとんど流通しない理由は、知名度の低さや採集量の少なさだけではない。大きな要因のひとつが、鮮度を保つことの難しさにある。

外皮が薄く、果実体には水分が多く含まれるため傷みやすく、さらに虫の食害も受けやすい。熟度が進みすぎると組織は柔らかくなり、香りも次第に強くなって、完熟時には悪臭に近い印象へと変化していく。そのため、遠く離れたヨーロッパから輸送し、日本国内で良い状態のまま流通させるのは至難の業だ。鮮度管理という点では、白トリュフ(Tuber magnatum)以上に難しい食材かもしれない。

だからこそ、ハニートリュフが日本国内に自生しているという事実には大きな可能性を感じる。採集のタイミングを適切に見極め、完熟する前の良い状態で収穫することができれば、香りや甘味に優れたハニートリュフを国内で楽しめる可能性がある。

そのために重要になるのが、熟度に関する正しい知識と採集方法だ。地表に姿を現してからではすでに熟しすぎている場合も多い。品質の良い個体を地中にある段階で見つけるには、トリュフ犬を使った採集が極めて重要になる。

国内で見つかり始めたハニートリュフを、単なる珍しい地下精勤として終わらせるのか、それとも新たな国産食材として活かしていけるのか。その鍵を握るのは、「どこにあるか」だけではなく、「いつ、どの状態で採るか」という知識なのではないだろうか。